なんとなく、新宿御苑
何かと諸用に追われて、パタパタ走り回った夏が過ぎ去り、季節は秋。
勤務先から近いこともあり、なんとなく新宿御苑に寄ってみた。
お昼下がりの公園は、ぽつぽつと人がいて、人混みが苦手な僕にとってはありがたい。
ベンチに座って本を読む人、小さくまとまって話をしている老人達、楽しそうに駆けまわる子供と、その母親らしき人達。そして、磨り減ったスニーカーで地面の感触を確かめながらのんびり歩く僕。
遠くの木々が微かに動いたかと思うと、少し遅れて風が吹く。
最近肌寒くなった風が、僕のシャツを膨らませる。この風は、どこへいくのだろう。
この公園を抜けて、狭苦しいビル街を抜けて、墓を抜けて、東京タワーを抜けて、海へ出るだろう。その先はどうなるだろう。潮風に打ち消されるのか、それとも、遠い異国の地まで旅するのだろうか。
公園では、そこに集まる人々の、人生の一コマが切り取られている。それぞれに両親がいて、呼び名があって、友人がいて、好きな人がいる。僕はそれらを全て知りうることが出来ないし、知るつもりもない。どこか知らない街に行ったとき、すれ違う人々や、通り抜ける路のすぐそばに、誰かの人生がぎっしり詰まっていると思うと、なんだか悔しいような、むず痒いような、不思議な気持ちになる。日常は、そんなことで溢れている。
いつの間にか、ぼーっと立ち尽くしていた。遠くには、新宿の摩天楼が見える。
誰かに呼ばれた気がする。でも多分違うし、振り返ったら負けな気がする。(僕はたまにそういう自分勝手な勝負をたのしんでる)
ざわざわと、またしても遠くの木々が騒ぎ出す。
最近ずっと放ったらかしていた髪が、ぐわっとなびく。
その風に押し出されるように、僕も歩き出す。
すたすた、すたすた。
今日の晩ご飯は、何にしようかな。
またねん。